博士号をとる理由と博士課程からの就職体験談

博士雑記

「博士課程に進んで就職大丈夫?」
これは私が博士課程進学を決めたときに親戚に言われた言葉です。
自身も博士課程の厳しさを想像し、最後まで進学を悩みました。
東京大学で工学博士を取得して企業の研究者となった今、博士課程について振り返ります。

結論

  • 博士号は大学だろうと企業だろうと研究者として生きていくなら必要
  • 大学院生向けの就職エージェントを活用すれば博士取得後の就職も問題ない(準備は必要)

博士課程進学を決めた理由

以下の内容は自身の経験に基づいており、博士課程全般には当てはまらない可能性があることを最初に断らせていただきます。

私は小学生の頃に「ドラえもん」の漫画に熱中して以来、発明家への憧れを抱いておりました。
ただし、就職への不安もあり当初は大学院の修士課程(2年間)を終えたら企業就職をしようかと考えていました。

青色発光ダイオードでノーベル物理学賞を受賞された天野浩さん・中村修二さんや、リチウムイオン二次電池でノーベル化学賞を取られている吉野彰さんなど始め、博士号(はくしごう)を取らずに企業でご活躍されている方もいらっしゃいます。

浜松科学館

学部時代には天野浩さんのノーベル賞受賞を受けた展示を観に行きました。浜松科学館では最先端の研究を一般の方にも分かりやすく紹介しており、光の展示が私は一番好きです。浜松駅から歩いて行くことができ、2019年にリニューアルしました。

それでも自分が博士課程進学を決めた理由としては3つ挙げられると思います。

研究をしていくことができそうかの検証

研究では、問題に対して自分で解決策を模索することが求められます。そのために研究者は毎日文献を調べたり、実験・上司などとのディスカッションをしたりします。数日・数か月程度ならまだしも、研究では成果を生むために数年(長ければ数十年)それを続けていかなければならないこともあります。
卒業論文(実質半年程度)や修士論文(2年程度)だけではずっと研究をしていくことがどういうことか実感がわかないと考え、博士課程でプラス3年研究をしてみようと思いました。

修士課程でやっていた基礎研究をもう少しやってみたかった

修士課程で途中から取り組み始めたテーマを最後までやり切りたいと考えました。最先端の研究をするためにまずは装置開発から始まりました。CADなどを独学で使いながら立ち上げを進めました。修士課程で立ち上げはある程度終わったのですがそれを使った研究はまだ途中でした。
純粋に現象解明を目的に行う研究は営利目的の企業ではなかなか難しいです。最終的に企業に就職するとしても、若いうちに基礎研究に納得するまでチャレンジしてみても良いのではないかと考えました。

研究者になるならば博士号はあったほうが良い

博士号というのは、研究者のパスポートと言われております。海外では博士号を持っていない人は研究者とはみなされません。一方で博士号を取得して卒業後ドイツやアメリカの大学に勤め始めた友人の中には、日本企業の初任給の2~3倍をもらっている方もいます。

修士課程で卒業して日本企業の研究職に勤めている友人の中に現在海外拠点で働いている方もいらっしゃいますが、周りは博士号持ちばかりだといいます。企業・職種によっては異動や出張で海外に行く可能性がある場合は特に博士号を持っているかどうかが待遇に大きく影響します。

また、日本企業でずっと働くとしても、企業によっては研究者は管理職などへの昇進で博士号が必要となるケースもあります。その場合には会社から博士号取得を強く勧められます。仕事の傍ら、休日に大学に通って博士号取得を目指されている方もいらっしゃいます。

企業への就職を決めた理由

博士課程を卒業して無事に博士号を取得したら、アカデミックで基礎研究をするという選択肢もあるかと思います。私が企業就職を決めたのは、企業の方が暮らしを豊かにする発明をしやすいと考えたからです。自身の根底にはドラえもんの世界への憧れが強くあるため、より応用に近い研究をしてみたいと思いました。

少し踏み込んだ話を補足しておきます。新しい発明をする上で大切なものは各技術の力と、他の技術との融合だと思います。ムーアの法則の終焉が叫ばれているように、技術力の限界と向き合っていかなければならない現代においては異なる技術の融合が特に重要になるはずです。第3次AIブームで注目されているように、特にIT技術は現代の新発明に欠かすことができないと思います。基礎研究を大学で続けるよりも企業でプログラミングなどの経験を積む方が選択肢が広がると考えました。

博士過程での就活体験談

就職エージェントのサポート

「就職できるか不安」という意見はあると思いますが、研究で得た力を評価してくれる企業は必ずあると思います。私自身も博士課程で行っていた研究内容と企業での研究内容は大きく異なっておりますが、某業界大手3社から内定をいただきました。最近では大学院生の就職をサポートしている企業様も存在していています。私自身は株式会社アカリクのエージェントの方に就活のプレゼンで使うスライドの添削など手厚いサポートをしていただいてとても心強かったです。

博士過程の就活スケジュール

卒業の1年半くらい前から説明会などに参加し始めました。私は研究職以外がどんなものか知るためにも、コンサルやWEBサービス系の企業の夏インターンに参加していました。

修士課程の学生は卒業1年前の3月くらいから就職活動が本格化しますが、博士課程の学生は通年採用なので原則どのタイミングで面接を受けても構いません。私は卒業1年前の12月くらいから面接が始まり、修士課程の学生よりは1、2ヶ月早く就活が終わりました。

研究者という進路に悩んでいる方へ

さまよう

研究者という職業は男の子の将来就きたい職業ランキングでここ10年くらいトップ10に入り続けているように、一定の人気を有しているといえます。

ただし、研究者としての生活は人によっては想像以上に苦しいものとなりえます。研究者を目指しても途中で退学・転職する同期をこれまでに何人も見てきました。これから研究者を志す人に対して今の自分が思う「研究をするということ」について4点述べさせていただきます。

Visionが大事

博士号をとることはゴールではなく、むしろスタートです。プライドのために博士号を取ったり研究を続けたりするのは私の思い描く幸せではありません。研究者になって何を実現したいのかを常に考え続けるべきです。研究で苦しんでいるときほどその思いが自分を支えてくれると思います。

勉強と研究の違い

勉強は正解を学ぶものですが、研究に正解は用意されておりません。受験勉強などでは参考書に書かれていることを学んでいけばある程度できるようになるでしょう。研究の場合には、文献を調べて仮説を立てて実験を行うなど、自ら行動を起こさなければなりません。

研究で求められる力

研究者は実験室にこもっているイメージが今でも強いのかもしれません。実験に没頭することも大切ですが、研究の多くは文献調査やデータの解析、議論・発表スライドの作成で占められており、研究で成果を出すには他者とのコミュニケーション力や情報収集能力、プレゼン力など、様々な力が求められているといえます。

研究者としての人生は多種多様で、不確実だから面白い

博士課程卒業後の進路も多種多様です。私の知り合いは博士課程卒業後に国家公務員やコンサル業界、ベンチャー企業などに就職して幅広く活躍してますし、起業している方もいらっしゃいます。特殊なところですと、現在教育系YouTuberとして有名な「ヨビノリたくみ」さんは東大の博士課程に進学した経歴を持ち、私自身も「物性若手夏の学校」という研究会でご一緒したことがございます。ヨビノリたくみさんのポスターは見た目も美しく、最優秀デザイン賞を受賞されていました。(うちわの絵がポスターに描かれていたのが印象的でした。ちなみに私も発表賞を受賞しました。)

私の東大での生活については「東大に憧れて田舎から出てきて変わったこと5選と実感した環境の大切さ」で紹介しておりますのでもしよかったらご覧ください。

研究の道に進んでみても、もっとやりたいことが見つかったらそちらの道に進めば良いと思います。研究者こそ、果敢にリスクをとって挑戦していく気持ちを忘れずにおくべきです。

私が研究や就活で参考にした本を以下に紹介します。

特に、
長谷川修司(2015)『研究者としてうまくやっていくには―組織の力を研究に活かす(ブルーバックス)』講談社
を何度も読み返して参考にさせていただきました。研究者の生活や考え方がよくわかると思います。

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