光の彫刻家イサム・ノグチ展 〜発見の道〜

2021年8月29日まで東京都美術館で、「AKARI」シリーズなどの照明で有名なイサム・ノグチという芸術家の展示が開催されていました。「え、こんな形のオブジェがこの世にあったんだ!?」と驚かされる作品も多かったです。

イサム・ノグチ

イサム・ノグチ(1904-1988)はアメリカ合衆国生まれの彫刻家です。

生まれはロサンゼルス

ロサンゼルス

生まれはアメリカの大都市、ということでスタートから私たちの多くとは違いますね。

  • 1904 年、日本人詩人の野口米次郎とアメリカ人作家のレオニー・ギルモアとの間に生まれる(国籍は日系アメリカ人)。その後母と3歳で来日。
  • 1913年からは横浜市のセント・ジョセフ・インターナショナル・カレッジへ転入。
  • 1918年に単身アメリカへ。1923年からはコロンビア大学の医学部に入学。

インターナショナルスクールやアメリカのコロンビア大学で学ぶなど、日常的に英語や海外の文化にも触れていました。

一方で日本人とアメリカ人の両方の血を引いたことでイサム・ノグチは第二次世界大戦の頃に辛い経験をしました。その詳細については様々な記事で述べられているため割愛しますが、テレビ朝日の記事どで詳細が記述されています。

医学部

野口英世の像
東京都美術館近くにある野口英世博士の像

イサム・ノグチはコロンビア大学医学部に在籍して医師を目指していました。医者が、食べるのに困らない資格だということがその要因だそうです。

しかしコロンビア大学で出会った黄熱病の研究で有名な野口英世に、医師ではなく芸術家を目指すように勧められたことをきっかけに、芸術家の道へと進みました。

コロンビア大学の医学部の傍ら、レオナルド・ダ・ヴィンチ美術学校の夜間の彫刻クラスにも通っており、入学後すぐに個展開催に至ったそうです。

イサム・ノグチ展 〜発見の道〜

2021年4月24日〜8月29日までイサム・ノグチ展東京都美術館で開かれました。牟礼のイサム・ノグチ庭園美術館以外で、イサム・ノグチの作品がまとめて展示されたのは今回が初めてです。

「AKARI」シリーズでイサム・ノグチのことを知っていましたが、牟礼(香川県)を訪れたことがないので作品群を直接観たことはありません。東京で展示会を開催してくれてラッキーです。

素材を大切にする

イサム・ノグチは石やアルミなど様々な素材を使って作品を作りました。

特に石への思い入れは強く、イサムノグチは愛と暴力によって石を割っていたそうです。愛を持って石を削る一方で、やりすぎると石が死んでしまうと考えていたのでしょう。

黒い太陽
「黒い太陽」

「黒い太陽」はスウェーデン産花崗岩を用いており、ライトアップによって石の光沢や質感が際立っていました。

イサム・ノグチが好んだ花崗岩

花崗岩は高い硬度を持ち、吸水率が低く耐久性に優れた石材として知られています。花崗岩はノグチが好んで用いた石材の1つです。地域によって呼び名がつけられていて、例えば香川の花崗岩は「庵治石あじいし」と呼ばれ、兵庫の花崗岩は「本御影ほんみかげ」と呼ばれます。

ヴォイド
「ヴォイド」

「ヴォイド」は「虚空」を意味し、環状の形によって無限の空間を暗示したブロンズ像です。包み込まれそうな印象を受けるので部屋の一角にあったら落ち着きそうだな、などと思いながら眺めていました(私の部屋には置き場がありませんが)。

山つくり
「山つくり」

大理石が比較的安価に手に入るようになってイサム・ノグチが制作したのがインターロッキングスカルプチュア(複数のパーツの組み合わせによる彫刻)です。

釘やネジを使わずに木を組み合わせる手法は「組み木」として知られていますが、イサム・ノグチの作品はその石バージョンでしょうか。

形状に関してはどういう意味があるのでしょうか?薄い板状でしっかり組み合わさっているため、シャープさと安定感を両方感じられます。

家具と彫刻を区別しない

AKARI
「AKARI」シリーズ

イサム・ノグチの作品として有名なのが「AKARI」シリーズという光の彫刻です。岐阜提灯から発想した作品であり、和紙と竹を使って制作されています。和紙によって生み出される柔らかな光そのものが彫刻なのです。

家具と芸術は異なるものとする考え方をイサム・ノグチは否定し、家具の中に芸術を取り入れています。

他の彫刻作品と比べれば(比較的)安価であるため、イサム・ノグチは「AKARI」が多くの人に使われることを願っていました。

最後に

今回、亡くなってから30年以上経っても人気が衰えないイサム・ノグチの展示についてご紹介しました。年譜などを調べていて思ったのは、尽きることのない創作意欲だと思います。イサム・ノグチは80歳を超えても作品を作り続けています。「自分はこれをやりたい」と思ってそれを一生続けた生涯は、語り継がれたものであってもその輝きが色褪せることは無いのでしょう。

今回は写真撮影ができませんでしたが、「フロアーロック」という作品はとても美しくて印象に残りました。文字だけでは魅力を伝えられないので、ぜひ1度生で観ることをお勧めします。

イサム・ノグチ庭園美術館が香川にあるので、いつか私も足を運んでみようと思います。

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