東大生は名だたる有名企業に多く就職しており、依然として東大ブランドは就職に強いです。
田舎育ちの私も東大に入学したことで多くの変化がありました。
「東大に行けば人生が変わる」という言葉もありますが、その実情について東大を卒業した私の経験から綴ります。
田舎育ちだった私が東大に入って変わったこと5選
田舎育ちだった私が東大に入って変わったことが5つあります。
・自分に自信が持てた
・信用が得られたことで 自分のやりたいことを実現しやすくなった
・芸術への興味が強くなった
・両親への感謝の思いが強くなった
基礎学習能力が向上した
受験で勉強した内容が仕事などで生かされる例は必ずしも多くは無いと思いますが、受験勉強で身についた1から学ぶ力は一生役に立ちます。
受験勉強で身につけた素地に加えて、大学での学びは私の基礎学習能力を向上させてくれました。
例えば大学で学んだ量子力学は、それまでに学んできた科目の中で一番難しいと感じました。
いきなり「光は粒子でもあり波でもある」と言われてもすんなり納得できる方は少ないのでは無いでしょうか?
春休みには学科の友人と量子力学を復習するグループLINEを作って勉強しました。わからないことに対しても、分かるまで考え抜く姿勢が身についたと思います。
社会人となった今でもプログラミングなど日々勉強する必要があり、受験勉強で身につけた勉強習慣が役立っています。
自分に自信が持てた
子供の頃にドラえもんが好きだったこともあり将来は科学技術の研究者がカッコいいなとぼんやりと思っていました。中学生の頃に隣の席の可愛い女の子から将来の夢を聞かれたことがありますが、カッコつけて「研究者」だと答えていました。研究者になるには日本で一番の大学に行くことが重要だと考え、東大を志すようになりました。
カッコつけたものの、本当に東大に合格できるのかは想像も付かなかったです。
塾に通っていなかった高校時代は書店においてある勉強法を漁り、和田英樹さんの本を特に読んでいました。自分にあった勉強法がわからずに思い悩むことも多かったです。
東大合格という目に見える成果は、自分がやってきたことが間違っていなかったという自信になりました。
私は物理工学科に進学し、量子力学や統計力学を学びました。難しくて理解できないことも多かったですが、自分はある程度の学力を身につけてきたという自信があったため頑張ることができました。
大学院時代に研究で成果を出せたことも私の自信に繋がりました。
私の研究では、測定に必要なスペックを持つ既存の装置がなかったために実験装置から自作する必要がありました。測定試料を冷却する機構作成やそれを支える土台のCADでの設計など測定に至るまでにも1年以上費やしました。
装置の状態が不安定だったため、最終データを取る際には装置が安定しているときを狙って丸2日間以上徹夜で実験したこともあります。
思うように試料が冷えなかったり、測定しても信号が取れなかったりして実験ができないことも多くあり、そのたびに原因の究明を迫られました。困難を乗り越えて成果を出せた経験は私に研究への自信を与えてくれました。
困難を乗り越える上では、教授が度々議論してくださったことも大きかったと思います。
東大では1人の教員が数人の学生の指導をしますが、大学によっては1人の教員に対して10人、20人の学生が付きます。東大では教授と議論できる機会が多く、教授の考え方の流れや知識を見習って成長しやすい環境だったと思います。
信用が得られたことで自分のやりたいことを実現しやすくなった
東大に入学するには一定以上勉強する必要があるため、東大生・東大卒の肩書きのおかげでバイト先や会社で会う初対面の人に対しても「努力できる人」と信じてもらいやすいです。
一番顕著なのは就職活動だと思います。
新卒採用の仕組みは簡単にはなくならない。日本で楽に就職したいなら、東大に行っておけ。https://t.co/o8mmWaDagK pic.twitter.com/BG55OBzyAc
— 桜木建二 ドラゴン桜2 バーチャルYoutuber (@sakuragidragon) October 3, 2018
ドラゴン桜でも描かれていますが、日本では一番入るのが難しい東大が最高の価値という社会の認識があります。上記ITメディアの記事では新卒採用の形式を変えることで生じるデメリットが取り上げられています。社会が変わらない限り東大への評価も変わることはない、と述べられています。
YouTuberやフリーランスなど新しい働き方が注目されるようになってきましたが、それでも大半の人々は以前と変わらず高校→大学→企業就職という流れで仕事につくと思います。
結局多くの人々にとっては東大に入学することが自分のやりたい仕事をするのに適していると言えます。個人の方でもその恩恵を感じている方はいらっしゃいます↓
東大生でいて得をすること 就職編
— 受験の鬼 Ace-K (@AceK45942872) October 28, 2020
・書類選考で門前払いがほぼ無い
・明らかな別ルートでの採用ステップが用意されることがしばしば
・東大枠として別枠が用意されることも少なからずあり
・東大のみを対象とした就活イベントが大学の近くで矢鱈とあって楽ができる
etc
私自身、就職活動では東大生向けの就活イベントが大学で開催されて楽でしたし、エントリーシート(ES)も通りやすかったように感じます。
志望業界以外も含め10社くらいESを出したところ、そのうち8社のESは通りました。私は博士卒で起業とのマッチングが修士卒の方より取りづらいことを考えると、多くの東大生はもっとESの通過率が高いのではないでしょうか?
私は就職して2ヶ月後には先輩社員と同様に国内・海外の方に対して研究のプレゼンをしていました。企業が扱う額はこれまでの自分の世界とは桁が違っておりプレッシャーも大きかったですが、上司は「東大卒のてるみかんなら大丈夫」と任せてくださいました。
新入社員はまだ実績も無い状態ですが、私は東大卒という肩書きのおかげもあって早い段階から成長・活躍するチャンスを与えていただきました。自分のチャンスを広げる意味で東大に入学してよかったと思います。
芸術への興味が強くなった
東大の駒場キャンパスは「渋谷駅」から2駅の近さであり、本郷キャンパスは「上野駅」や「東京駅」に近いです。これほど都心で大学生活を送れるのも、東大ならではだと思います。
本郷キャンパスからは上野の国立西洋美術館・国立科学博物館や半蔵門駅・永田町駅最寄りの国立劇場など、多くの場所へのアクセスが良かったです。
高校生までの間はせいぜい高校の近くの美術館に行った程度でほとんど芸術と関わることが少なかった私ですが、特に上野の国立西洋美術館には私は何度も足を運ぶようになりました。企画展も多く開催されているので、何度行っても飽きることがありません。高校生の頃と比べれば今では芸術への興味も格段に上がりました。
また、東大生はピアノを習っている方が多く、音楽や美術に興味を持っている方も多かったように思います。観に行った展示の話題について興味を持って聴いてくれる方・一緒に観に行ってくれる方がいたので芸術を楽しむにも良い環境だったと思います。
両親への感謝の思いが強くなった
東大に入学できたのは私自身の努力もありますが、私の両親の献身的な支えがあったおかげです。
裕福な家庭ではなかったものの、金銭面では大学時代の生活費の多くを負担してくださりました。小中学生の頃の習い事や塾の費用、その送り迎え(バスが無くなることが多かったので片道1時間くらいかけて迎えに来てくださいました)など、私のやりたいことを全力で応援してくださいました。
東大という恵まれた環境にいるからこそ大学進学をサポートしてくれた両親への感謝の思いは強くなっていると感じます。
大学生になって、毎日朝起きたら用意されている朝ごはんが決して当たり前のものでは無いことを実感しました。
社会人として給料をいただくようになって、子供に毎月何万円も費やすのは決して簡単なことでは無いと実感しました。
9年間も大学に通っていたため、今ではもう両親も還暦です。これからは趣味などにより多くの時間を費やしてほしいです。
田舎育ちの私が東大で感じた環境の大切さ
私が東大と他大を比較して感じたのは「環境の違い」が大きいということです。
東大では他大では行われていないような最先端の研究が行われております。これは東大の研究費が他大と比べて多いことにも起因しています。
例えば私の研究では試料をマイナス270℃まで冷却する必要があり、冷却のために液体ヘリウムを用います。液体ヘリウムは貴重なので、損失すると1ヶ月だけでヘリウム代が数十万以上かかることもあります。東大にはヘリウムの回収設備が整っていることもあって、ヘリウム代が比較的安く抑えられていますが、回収設備がない大学では液体ヘリウムを使った実験はおいそれとできません。
学会で研究者の方と議論する際に研究環境の話をすることもありますが、地方大学だと上記の冷却設備などの実験環境が整っていないために、装置は外部のものを借りて測定することも多いようです。
もちろん教員の質としても東大はトップレベルなので、研究の議論を通して第一線で活躍する研究者から学べます。自分が全く気づかなかった観点からアドバイスをいただくことも多いです。
教授からのご指導のおかげもあり、次第に私も一人の研究者として学会で発表するようになります。
物理を研究している大学院生の方たちが集う「物性若手夏の学校」に参加した際に、同世代の学生たちと研究について夜遅くまで語り合ったのが良い思い出です。将来アカデミックに進む方、企業就職の方、迷っている方など多くの方の話を聞きましたが、やはりどの道に進むにせよ東大で研究できるのは恵まれていると感じました。
YouTuberのヨビノリたくみさんのポスター発表では、夏ということでうちわのイラストが描かれていたのが印象的でした。(時期は異なりますが、夏の学校の様子がYouTubeで紹介されています↓)
成長に置いてはもちろん個人の努力は不可欠です。ただし自身が身をおく環境によってはできることが制限されてしまうことを考えると、東大のような恵まれた環境を選択することが自分のやりたいことを実現する近道だと思いました。
まとめ
今回は、東大に進学して博士課程まで9年間東大を見てきた自分の経験を振り返り、東大に進んで変わったことをまとめました。東大に合格したことで自分自身の見方も、周りからの評価も、過ごす環境も大きく変わります。私が得た貴重な経験は、東大に進学しなければ得られなかったと思います。
コメント